2026.04.13

「熱性けいれんの既往があるお子さんへの対応」

・熱性けいれんの既往を持つお子さんが少なくありません。

・良性のけいれん(単純型の場合)ですが、3-4%はてんかんに移行するといわれています。

・生後5,6か月から小学校入学前の5歳頃まで、日本の小児の約8%にみられます。

・6歳以降になるとけいれんを起こすことは稀となり、成長や発達は正常です。

・熱性けいれんの発作予防としては、発熱がみられた場合、日本ではダイアップ(ジアゼパム、以後は日本人に馴染みが深い商品名ダイアップと表記します)坐薬を発熱時とその8時間後にも熱があれば再度使用する、という「2回法」が主流でした。

・欧米では単純型(下記の表を参照)である場合、けいれんを反復してもダイアップの使用は必要ないとされています。

・熱性けいれんの対応は①初発時と②熱性けいれん既往者の発熱時の対応、をガイドラインに則って考えたいと思います。

    ☆お子さんに「熱性けいれん」の既往があり、発熱時や保育園や幼稚園での対応が心配なご家族は

    ぜひ、「シン・東京駅こどもの成長クリニック」にご相談ください。

初発時

乳幼児、特に生後数か月以降での「発熱+けいれん」では髄膜炎や脳炎を否定したうえで「熱性けいれん」を考えます。救急隊から「体温38.9℃、現在、けいれんは止まっており、現在は意識は清明で元気」との連絡があれば熱性けいれんの疑いを持ちます。熱性けいれんは3分-5分程度でけいれんが止まる場合が多いのです。

日本では熱性けいれんと医師が判断すれば、ダイアップを外来で使用し、8時間も熱があればもう1度使用、という2回法をとっていました。

しかし、アメリカ小児科学会のガイドラインでは単純型熱性けいれんを反復してもダイアップの使用は推奨していません。

しかし、初発発作の我が子のけいれんをみた家族の不安や動揺は当然強いものです。医師が単純型の熱性けいれんだと診断し、ダイアップの必要性がない良性のものだと説明しても、親御さんは動揺の中で、理解可能でしょうか?。家族の不安を考えれば、初回発作時はダイアップの2回法を行い、翌日、経過観察目的で再診してもらい、親御さんの気持ちが落ち着いていれば、次の②のように、今後の発熱時の対処法をしっかり、説明すべきだと思います。

まず、初発での受診時は意識レベルや血圧などバイタルサイン確認、既往歴、家族歴、妊娠分娩歴の確認はもちろん、脳炎・脳症や髄膜炎の除外をしなければならず(髄膜刺激症状は1歳半まではでにくいとされています)、熱性けいれんを疑っても意識が清明であることを確認してから、あるいは意識清明になるのを待ってから、ダイアップの1回目を使用、8時間後にも明らかな熱がある場合、2回目の使用を家庭で行うよう説明します。この、外来での1回目の薬の投与を見ただけで、家族は「治療してくれた」という安心感が得られます。けいれんしたのに、病院で何もしなくて帰宅というのも不安でしょう。 もちろん、下の表で複合型熱性けいれんや脳症・脳炎、髄膜炎の可能性がれば、入院し詳しい検査が必要です。熱性けいれんの97%は単純型で複雑型は3%程度といわれています。

 ➁熱性けいれん既往がある児の発熱時の対応

1)発熱時の解熱薬使用:親御さんにとってはお子さんに発熱があり、ぐったりしていれば、まず、解熱剤を使いたくなるものです。熱性けいれんのガイドラインでは「解熱剤が熱性けいれんを予防できるとするエビデンスはなく、再発予防のための使用は推奨されない」としています。ガイドライン策定委員会の委員長は、「複数の質の高いランダム化比較試験で解熱薬によるけいれんの再発予防効果はないことが示されている」と説明しています。つまり、「解熱剤で熱を下げてもけいれんを予防できるという証拠がない」のです。

2)解熱薬によるけいれんの誘発について:ガイドラインは「解熱薬使用後の熱の再上昇による熱性けいれん再発のエビデンスはない」としています。委員長は、「今回の検討から、熱性の誘発を心配して解熱薬の使用を控える必要はないことも分かった」としています。

解熱薬は、熱性けいれんの既往歴があっても特別な使い方をする必要はなく、熱性けいれんの既往がない児同様に、水分が取れない場合や苦しくて眠れない場合、家族が不安を感じている場合などに頓用で使う分には問題はない、としています。以前は解熱剤の効果が切れ、熱が再上昇する際にけいれんを起こしやすいのでは、と解熱剤使用を躊躇する傾向がありました。

3)ダイアップ坐薬の使用は過剰の状況では?:ガイドラインでは、熱性けいれんの既往歴がある小児に対して、発熱時にダイアップ坐剤の投与を「ルーチンに行う必要はない」とする指針を示しています。これは、必ずしも必要ない小児にもダイアップ坐薬が予防投与されている現状を受けたものです。

単純型の熱性けいれんを1回起こしただけの児にも、ダイアップ坐薬が予防投与されている場合が多いのですが、ガイドラインでは、ダイアップ坐薬の適応を(1)15分以上持続したけいれん(遷延性発作)を起こした場合、(2)家族歴や生後12カ月未満の発症などの危険因子が2つ以上あるけいれんを2回以上反復した場合、と、かなり限定した基準にしています。

これは、(1)単純型の熱性けいれんは繰り返しても認知機能への影響はないとの報告がある、(2)半数以上は一生に1回しか熱性けいれんを起こさない、(3)ダイアップ坐薬はふらつきや眠気、興奮といった副作用が比較的よく出る、などの理由により、不要な投薬を減らしたいとの考えからです。

・実際の対応

1)結局、ダイアップ坐薬はどうすれば?:ガイドラインでは使用は必ずしも必要ではない、としていますが、現実的に親御さんにとってはいくら「良性の単純型熱性けいれん」と分かっていても、わが子のけいれんは2度と見たくありません。発熱のたびにけいれんを起こすのではないか、と心配するのも大変なストレスです。また、自宅から病院までが遠い、夜間救急の施設がないなどの問題、夜間の発熱の時にもダイアップを使わないで様子を見るというストレスも考慮しなければなりません。個人的には心配なら2回までダイアップ使用は良いのではないかと考えます。しかし、ダイアップの副作用を考慮し、使用しないで様子を見る、という勇気も必要です。「使わなくてもけいれんは起きなかった」という自信になれば良いのではないでしょうか。  

    ダイアップ使用でフラフラしたり、興奮したりしてお子さんが辛い思いをする可能性、万一、熱性けいれん以外の原因があればダイアップの影響で原因が不明になってしまう、というデメリットも併せて考えましょう。

    2)保育園・幼稚園児の場合:さて、保育園児・幼稚園児で熱性けいれんの既往があるお子さんの場合の対応です。ダイアップにはデメリットがあるといいながらも、園で熱性けいれんが起きると、園での対応が大変です(もちろん、園職員も熱性けいれんへ発作時の対策は心得ているはずです)し、職場にいる親御さんにとっても心配です。園によって熱性けいれんがある園児への対応が異なる場合があるので、あらかじめ園に確認、相談しましょう。

    一例ですが、園にダイアップ坐薬を本人用に置いてもらい、園で体温が37.8度以上ある場合、園から親御さんに電話し、園でダイアップ坐薬を使用することの許可を得ます。園に置くダイアップは医師が処方します。また、このような園での対応に関する指示書も医師が記載します。

    ・熱性けいれん児への抗ヒスタミン薬について

    さて、けいれんを起こしやすくする、とされている鎮静性抗ヒスタミン薬と熱性けいれんとの関係も知っておく必要があります。ガイドラインでは、熱性けいれんの既往歴がある小児に対する鎮静性抗ヒスタミン薬の使用について「発熱性疾患罹患中の使用は推奨されない」としています。

    下の図では抗ヒスタミン薬を「鎮静性」、「軽度鎮静性」、「非鎮静性」に分けています。鎮静性は脳内への薬物以降率が高く、熱性けいれんの既往がある児にはけいれん誘発の可能性があり、不適切とされています。

    アレルギー性鼻炎や蕁麻疹などで抗ヒスタミン薬が必要な場合は、「非鎮静性」のものを処方します。

       受診の際は必ず、医師に「既往に熱性けいれんがある」とお伝えください。

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