2026.03.06
コラム小児の発熱について
子供さんの発熱は通常の診察で最も一般的な症状の一つです。しかし、親御さんにとっては、わが子の発熱、特に産まれて最初の発熱はとても心配です。近年はご両親ともに仕事があり、お子さんを保育園に預けている家族が多いですね。お子さんの発熱ともなれば仕事への影響もありその対応が大変です
赤ちゃんは生まれて数カ月間は母体からもらった免疫があるので、生後数か月頃までは発熱することはまずありません。生後数か月以降ともなれば、保育園に預ける家庭もあります。ちょうどお母さんからもらった免疫が低下するころに集団生活を始めることになります。発熱、咳や鼻汁をきたす風邪ウイルスは100種類以上あるとされていますので、これらのウイルスのいくつかを順番に感染することもあるでしょう。
しかし、注意すべきは「生後2か月までに発熱」があれば、小児科医はウイルスではなく、細菌感染の可能性を考えます。ウイルスよりも細菌のほうが一般的には慎重に考えます。細菌感染であれば、なんという細菌が、どこに(喉、気管支や肺、尿、血液、髄液など)存在するのかを調べる必要があります。このためには大きな病院への紹介が必要です。尿、血液、髄液を検体として抗菌薬治療の点滴治療が必要な場合があるからです。
以前はインフルエンザ菌(同じインフルエンザの名前が付いていますが季節性のインフルエンザウイルス感染症とは全く別物)や肺炎球菌による髄膜炎や敗血症という重症の細菌感染症の小児が一定数いましたが、定期接種でインフルエンザ菌B型(ヒブ)や肺炎球菌に対するワクチン接種が行われてきたため、これらの細菌感染症はずいぶん減ってきました(現在は5種混合ワクチンに含まれています)。
生後数か月以降の発熱はウイルス感染症をまず考えます。いわゆる「のどかぜ」で鼻汁や咳を伴う場合があります。不機嫌であれば急性中耳炎合併も考えます。
1歳前から1歳代の発熱は突発性発疹症の可能性があります。3日ほど発熱し、解熱と同時くらいに発疹が出ます。熱が高くても機嫌もよく、食欲も問題ない場合が多いです。突発性発疹症が生まれて初めての熱というお子さんも多くいます。突発性発疹症は怖くありませんが、しばらく予防接種はうけられないので注意しましょう。予防接種の予定がある場合、小児科医に相談しましょう。そのためには発疹が出たら消えないうちに携帯で写真を撮っておき、医師に見せればよいかも知れません。
園などの集団生活ではRSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、溶連菌、アデノウイルスなどが流行する時が必ずあります。これらの感染症は迅速検査で診断できますが(検査結果が100%正しいとは言い切れません)、「流行=重症=怖い」ではなく、各々の症状の「重症度」が大切です。例えばRSウイルスは2歳までにほぼ全員が感染するといわれています。RSウイルス感染症でも元気で軽度の鼻汁のみの場合も多く、気が付かずに病院にもいかない、検査も受けない場合も多いのです。反対に呼吸困難をきたし入院が必要な場合もあります。つまり、同じRSウイルスでも軽症から重症まで様々なのです。
一般的な風邪ウイルスでも3-4日発熱が持続する場合があります。熱が心配で解熱剤を頻回に使用する親御さんがいますが、解熱剤で感染症を治すわけではないのです。発熱は微生物をやっつけようとする人間の「防御反応」なのです。ウイルスなどの微生物の勢いが収まらない間は、解熱剤を使っても解熱しない場合や解熱してもすぐに体温が再び上昇する場合もあります。傘をさしても雨が止まないのと一緒です。発熱時で最も大切なのは水分を多めに摂って脱水症を予防することです。食欲が落ちると、栄養を心配し、無理にでも食事を食べさせようとしてあせる親御さんがいますが水分を優先しましょう。
発熱の場合2,3日は「家で安静」が基本ですが、もし、咳が多くヒューヒューいったり、息が早く苦しそう、嘔吐や下痢が頻回、水分摂取量が少なく、尿量も少ない、などがあれば、早めの受診が必要です。
大学病院にいた時、元気はあるものの発熱で午前受診した幼児。午後も熱が持続し、夕方も受診。お父さんが夜に帰宅し、今度はお父さんも心配で深夜に救急を受診するという例を何度か経験しました。発熱以外に大きな症状が無ければ、安静も大事な治療ですので落ち着いて対処しましょう。
熱ばかりに気を取られず、ぐったり度、水分摂取量や尿の回数、量、咳があればその頻度や呼吸困難の有無、呼吸回数など。嘔吐や下痢の有無や回数をチェックしましょう。