2026.04.07
コラム「成人の方へ:麻疹(はしか)の抗体検査とワクチン」
1.麻疹が流行中
2026年、1月から3月までに「麻疹(はしか)」感染者が東京都内で71人になったとういうニュースがありました。
東京都のHPでは3月下旬に判明した3名の麻疹感染者の内容が記載されていますが、20代2名と30代1名でいずれも成人で麻疹ワクチンの接種歴は不明です。
これらの人たちのこれ以上の詳細は分かりませんが、成人になると、母子手帳の所在が不明になったり、感染歴も本人や家族も覚えていない場合も多いのです。
東京都だけでなく、日本中で麻疹感染者が増えています。もちろん、麻疹は世界的にも以前から感染者が多く、海外からの日本への渡航者から感染する可能性も大いにあります。
コロナ禍が下火になり海外との往来が増えてきたので、麻疹の流行もたびたび起こる可能性があります。成人の方で麻疹のワクチン接種歴や感染歴が不明で、抗体検査あるいは麻疹ワクチン接種(MRワクチンという麻疹・風疹ワクチンとなります)をご希望の方はいつでも当クリニックまでご相談ください。
麻疹に対するワクチンは現在では1歳の時と小学校入学前の2回MRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチン)を接種します。
麻疹ワクチンについての歴史は後で述べますが、なぜ、成人になって麻疹に感染するのでしょうか?まずはワクチンと免疫の仕組みを考えてみましょう。
2.ワクチンと免疫の関係
例えば、記憶力テストで、10種類の動物の写真を見せ、どんな動物の写真があるか覚えてもらいます。何日か後に、いくつ記憶しているか、テストします。6種類以上覚えていれば合格(免疫を持っている)とします。10種類すべて覚えている人もいれば、ギリギリ6個で合格の人もいます。また、全く覚えていなくて正解がゼロの人や正解5個の人でギリギリ不合格の人もいるのです(免疫が弱く感染防止の期待はできない)。このように、記憶したはずなのに(ワクチンを接種したのに)記憶が未熟な人(免疫がついていない、不十分)も一定数います。
さらに、たとえ最初のテストで10種類すべて覚えていた人でも時間が経つと3種類、4種類しか覚えていなくて、いつの間にか不合格(免疫がなくなってしまう)になっている場合もあります。
このように、ワクチンを打っても最初から免疫がつかない人(記憶が未熟な人)の場合をprimary vaccine failure(一次性ワクチン効果不全)といい、何年か経ってから感染を防御できないほど免疫が低下する人の場合(最初は記憶があったが、時間が経過すると忘れてしまう)をsecondary vaccine failure(二次性ワクチン効果不全)といいます。
このように、ワクチンを打っても感染してしまうことをブレークスルー感染(breakthrough infection)といいます。

ここで麻疹(はしか)の話に戻します。2007年に高校生、大学生で麻疹(はしか)が大流行し、多くの大学で休講対策がとられた事がありました。何故、10代後半から20歳代の若者が麻疹に感染したのか?
実は感染者には子供のころの時代に麻疹ワクチンを打った人と打たなかった人がいたのです。前述の説明のように、昔、接種したけども、20年前後で免疫が低下した人、最初から免疫が付かなかった人もいましたが、さらには麻疹ワクチンを打たなかった人も多くいたのです。この「打たなかった人」のその理由は2007年当時の高校生、大学生が子供のころの1989年は、おたふくかぜ、麻疹、風疹が一緒になった混合ワクチン(MMR)があったのですが、その中に入っていたおたふくかぜワクチンによる髄膜炎の副反応が報告され、1993年に接種中止となりました(現在のワクチンは安全です)。麻疹ワクチンも風疹ワクチンも単独のものを使用することになりました。しかし国民のワクチンへの不信感もあり、ワクチン接種を控える家族も多かったのです。。
この「ワクチン接種を控えた世代」が10歳から20歳代になっていたのも2007年麻疹流行の一因とされました。つまり流行のきっかけは①接種して有効な抗体があったが、20歳前後で低下した、②接種したが最初から有効な免疫が得られなかった、加えて③もともと接種を受けていなかった、の3パターンが合わさったのでした。
3.あなたの生年月日で麻疹ワクチン対策を考えましょう
ここで、生年月日による麻疹ワクチンの接種体制と対策を下記に示します。簡単に言えば、どの年代も「麻疹ワクチンは2回接種しましょう」ということです。
その前に、ご自分の母子手帳があれば、ワクチン接種欄を開き麻疹ワクチンの接種有無や接種回数を確認しましょう。また、麻疹の感染歴があるかどうかをご両親、家族などに確認しましょう。麻疹感染歴が確実にあれば抗体価やワクチン接種は必要ありません。ただ、麻疹と風疹を混同している場合がありますので要注意です。あやふやなら、感染歴不明としましょう。 母子手帳確認で接種回数が不足している場合や感染歴がなかったり不明な場合は当クリニックにご相談ください。

現在は麻疹・風疹ワクチン(MRワクチン)を2回接種し、免疫効果を上げます(ブースター効果)。麻疹に対する免疫が不十分でも以前は周囲に麻疹感染者が一定数いたので、感染者と接触しても感染したことに気が付かず(不顕性感染)にあたかもワクチンを受けたのと同じ効果で免疫が上昇していたのです(自然にブースター効果)。
電車に普段乗っていると、知らぬ間に駅順を覚えるのと同じで、先述の動物記憶も時々、復習すれば記憶が長持ちするのと似ています。人間の記憶力と免疫力はどこか、似ていますね。
4.まとめ
①全国的に麻疹(ましん)が流行中です。
➁成人の方は麻疹のワクチン接種歴、感染歴を確認しましょう。
③生年月日により、麻疹ワクチンの接種方法が違う世代がありますので、当ブログ内の生年月日別対応表で確認をしましょう。
④麻疹の抗体価・ワクチン接種のご希望の方は、当クリニックにご相談ください。