2026.06.09
アデノ・ウイルスを知ろう!
・アデノ・ウイルスについて
アデノ・ウイルスは保育園などの集団生活で流行する感染症です。このため一般の方にも知られるようになりました。このウイルスも迅速診断キットで診断が可能になり、検査をする患者さんが増えたことも知られるようになった原因でしょう。
特に、これからの夏季は後述の「プール熱」が流行します。
アデノ・ウイルスの「アデノ」は元々、咽頭という意味です。昔から咽頭炎の原因として知られていました。
・アデノ・ウイルスには下の表のように50以上の型があり、型によって症状も様々です。
大まかには、①呼吸器感染症(咽頭炎、肺炎)、➁咽頭結膜熱(熱、咽頭と目に症状:プール熱)、③流行性角結膜炎(目だけの症状:はやり目)、④胃腸炎、⑤出血性膀胱炎(尿が赤い)、の5つの疾患に区別できます。

①呼吸器感染症は1から7型までの型が多く、主に咽頭炎の原因で扁桃に白い膿(白苔)が付着することがあります。7 型は肺炎を起こす可能性があります。
➁“プール熱”とも言われる「咽頭結膜熱」は文字通り咽頭と目の結膜に症状が出ます。3型が原因として多く,1,4,14型でも見られます。
③“はやり目”とも言われる「流行性角結膜炎」は主に8型が原因です。非常に感染力が強く、登園・登校には医師の判断が必要です。
※ここで、アデノ・ウイルスが原因で「目に症状」を起こす咽頭結膜熱(熱、目、咽頭炎)と流行性角結膜炎(目のみの症状)、さらに細菌が原因の麦粒腫と霰粒腫の鑑別を下図にまとめました。

④胃腸炎を起こすのは41型が最も多く、腹痛、嘔吐、下痢を起こします。
⑤出血性膀胱炎は11型が原因として多く、赤い尿、排尿時痛、残尿感などがあります。
・アデノ・ウイルスの検査
園などでアデノ・ウイルスの流行があり、目の症状、咽頭発赤、あるいは胃腸炎の症状があればアデノ・ウイルス抗原迅速検査キットでの検査を行います。
咽頭・鼻腔や目の瞼(まぶた)から綿棒で検体を採取します。

また、胃腸炎では便や肛門からの採取となります。
・迅速検査では型までは分からない。
前述の表のように、アデノ・ウイルスには多くの種類があり、型によって症状が違います。しかし、迅速検査ではアデノ・ウイルスの陽性・陰性は分かりますが型までは判定できません。患者さんの症状と合わせて診断します。
・アデノ・ウイルス感染症は細菌性感染と紛らわしい場合がある。
発熱で受診される子どもさんの大半がウイルス性で、3,4日以内で解熱することがほとんどです。発熱がそれ以上持続すると細菌性の感染症を疑う場合があり、採血を行うことがあります。
採血の結果では白血球数とCRPという炎症反応が重要です。白血球数が増え、CRPが高値なら細菌感染を疑います。しかし、アデノ・ウイルスはウイルスであるにも関わらず、白血球が増え、CRPも高値になり、まるで細菌感染のような結果になります。アデノ・ウイルスは炎症に関与するサイトカイン分泌に関与するためだとされています。
もし、アデノ・ウイルスの迅速検査をせず、採血だけすると、白血球数やCRPの異常から細菌感染と診断し、ウイルスには不必要で効果がない抗菌薬(抗生剤)を処方してしまう可能性があります。
・アデノ・ウイルスは発熱期間が長い場合がある。
発熱1,2日程度であれば迅速検査や採血をせずに経過を見る場合がほとんどです。発熱が長引く場合、アデノ・ウイルス検査を行い、陽性であれば、採血検査までやらなくて良いかも知れません。
アデノ・ウイルスを含めほとんどのウイルス感染症には特異的な治療法(特効薬)がありません。ただ、アデノ・ウイルス咽頭炎は発熱が7日以上持続する場合があり、家族は心配です。しかし、重症化することはほとんどないので落ち着いて様子を見ましょう。
・アデノ・ウイルスまとめ
①50以上の型があり、型により「呼吸器感染症」、「咽頭結膜熱(プール熱)」、「流行性角結膜炎(はやり目)」、「胃腸炎」、「出血性膀胱炎」の疾患がある。
➁小児では園や学校で「咽頭結膜熱(プール熱)」、「流行性角結膜炎(はやり目)」が流行することがある。
③検査には抗原迅速検査がある。
④採血では細菌感染症と紛らわしい結果(白血球増多やCRP陽性)になりやすい。
⑤咽頭炎では発熱期間が1週間以上になる場合がある。
⑥このウイルスに対する特異的な治療法はない。